【4月超会議レポート】スポーツの価値や存在意義を高めるために、ビジネスの観点から考えてみよう!

東京オリンピックも直前に迫ってきましたね。
現在日本人アスリートの活躍は本当に目覚ましく、オリンピックでの活躍は大いに期待したいですよね。

しかしながら、日本では古くから重大な課題が横たわっております。

それは「スポーツ単体で稼ぐということが出来ないこと」。
早くからプロ化が行われていた野球やサッカーでも実際にチームが消滅するという事例があったように、まだまだスポーツビジネスという観点では日本は後進国と言ってもいいくらいなのです。

そこで4月には「どうすればスポーツを文化として普及していくことができるか?」という観点から、
スポーツビジネスのプロをゲストにお呼びました。

株式会社ZERO-ONE代表取締役の葦原一正さんにご登壇いただきました。

日本のスポーツが遅れてしまった理由とは?

本題に入る前に、日本においてスポーツビジネスがなかなか根付かなかったいきさつについて考えてみましょう。

元々スポーツ単体でお金を稼ぐという発想が日本には乏しく、Jリーグやプロ野球でさえもあくまでも企業の広告宣伝の一環でしか無かったということが挙げられます。

これらは1990年代にはバブル崩壊の影響を受けて、多くの企業が運動部の休部と廃部を選択したことも背景にあります。日本におけるスポーツは企業ありきという「弱さ」がまだまだ介在しているというのが現状にある。
この事実から目を背けてはいけないのです。

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1998年には横浜フリューゲルス、2004年には近鉄バファローズが消滅しました。
プロスポーツでも経営をしっかりとしなければ無くなってしまう。そういう時代だったのです。

一方でプロ野球では、かつて黒字で経営をできているチームは12球団中半分も無いと言われておりました。赤字分については、親会社が損失補填して良いという法律があるため、本当の意味で「球団経営」というのが浸透できていないのが実情だったのです。しかし、2020年こそ赤字球団は2球団ほどありましたが、いずれも「会社単体」として経営が成り立つ数字にはなっているようなんですね。

また、変えようにも日本ボクシングコミッションなどに代表される内部での権力争い、学閥や企業内派閥の問題。
これによってなかなか変化ができない、ということも大きな問題として現在まで横たわっているのです。

誰に来てもらいたいのか考え、仕組みを作る

まず大前提として始まったのが「お金を稼ぐ仕組み」を作り上げることでした。
葦原さんは元々オリックスバファローズでも働かれていたことがあり、パ・リーグでの風土というのを知っていたのが大きかったと言えます。

かつて「人気のセ、実力のパ」とも言われたように、パ・リーグは必ずしも注目されてきた存在ではありませんでした。その中で、様々な業界の方々が入ってこられてトライをしたということ。その中で積み上げてきたノウハウや他の球団との情報交換。こういったものが、ベイスターズでもBリーグでも同じようなことをしていたと振り返ります。

これは昔本当にあったプロ野球の試合中の出来事です。
試合中に麻雀を始める観客もいたり、試合そっちのけで競輪を見ていた観客もいたとか。
古き良き時代と言えば響きは良いですが、これでは選手側も経営側もやり切れませんよね。

球団の収益が上がれば、それだけ選手やスタッフにも還元されます。だからこそ「お金を稼ぐ仕組み」を作ることが大事だということ。そしてそのためには「どこにターゲットを絞る必要性があるのか?」ということ。「ビジネスでは当たり前のことなんですけれどね」と葦原さんは振り返りながら、Bリーグでの時のこと、何が大切なのかを深く語ってくださいました。

特に印象的だったのが、普及したからと言って儲かることと強化につながることはイコールではないということ。実際にバスケットボールの競技人口の多さと比例して、男子では全く勝てていなかったという実情を語ってくださいましたし、なでしこジャパンが世界制覇した後も必ずしも女子サッカーの環境が改善されたわけではなかったということ。だからこそ、アスリートの方々に「稼ぎなさいよ、ということを伝えていた」というのは大きく納得が行くものでした。

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実際にJリーグでもイニエスタ、ヴェルマーレンといったヨーロッパを舞台に活躍していた選手が多く来るようになったのはJリーグというコンテンツが稼げるようになったから。DAZNとの大型契約によって、金銭的に潤ったこと。
イニエスタとヴェルマーレン両選手の所属するヴィッセル神戸の親会社が楽天で、FCバルセロナのスポンサーになるなどして経営的に成功を収めていること。

選手単体ではなく、親会社や協会なども稼ぐということをバックアップしていく姿勢が何よりも大切であることが良く分かりますよね。だからこそ、葦原さんは「そもそも“スポーツビジネス”と分けてしまっていることがおかしいのかもしれない」と前置きした上で、対戦相手が居るからこそのスポーツの特殊性はあるけれども、実際ビジネスにおいての特殊なことはそれほど感じてはいないようでした。

ビジネスにおいて4つの収入(チケット・グッズ・広告・放映権)を伸ばしてコツコツやれば良いだけで、それほど他のビジネスと変わらないと語る葦原さんの言葉には説得力と重みがありましたね。

とはいえ、まだまだスポーツ界だけに限らず「それで稼ぐことが悪いこと」と考える風潮が無いわけではありません。そのような風潮などを含めて、スポーツ業界における課題についての話題となりました。

忖度なく、日本のスポーツ業界の課題に切り込む!

スポーツ業界における課題は「ビジネスとガバナンス」にあると葦原さんは語ります。実際に、意思決定機関がガバガバな会社はいくら収益があったとしても最終的には経営破綻に繋がります。それは過去の事例を見ても明らかですし、今現在危機を叫ばれている競技はこのガバナンスに重大な欠陥を抱えている組織が多いことが事実です。

何かを改革しようと思っても「お金が無い」などの理由を持って改革を断られることもしばしばあるスポーツ業界に対して、葦原さんは厳しくそして重たい言葉を投げかけます。

「逃げるんだよ。大人たちは。金が無いなら作れば良いだけの話」

もちろん協会関係者の方などが改善を試みている人たちがいらっしゃることは事実でしょう。しかし、2011年より端を発している日本ボクシングコミッションの問題、大相撲の問題。そして、直近であった森喜朗前東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の問題。こうした大きなことから、私たち自身に至るまで。帰結するのは「問題から目を逸らして保留し続けてきた」ということ。

そして、本当に物事を変えて行きたいのならば目の前にあること、求められたことに全力で取り組んでいくということ。運営側もアスリートが本来持っているポテンシャルを最大限に発揮していかないと、世界は変わって行かない。スポーツ業界で長く続けてきたからこその言葉であると感じましたし、自分にもとてつもなく響くものでした。

また、かかわって来られたからこそ葦原さんもスポーツに秘めた多大なる可能性を信じている方です。

4月より初代代表理事を務めているハンドボール協会において、一つまたビジネスモデルとして形を確立させることに加えて多くの人たちがスポーツに触れることができる機会を作るために「ハード面」に興味を持っているのだそうです。

それはヨーロッパにおいてスポーツの位置づけの高さから来るものですが、やはり街の中心部にスタジアムやアリーナがある光景。それに夢を見て少しでもスポーツの取り巻く環境を良くしたいと考えているからこそなのだということ。だからこそ、言葉一つにとても重みを感じるのでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

葦原さん曰く「コツコツとやってきただけで、あとは縁なんです」と謙遜されていましたが、今までの方々とは異なった「本質的にある問題」に向き合い続けて変えて来られたからこその重みを感じました。

忖度なしでズバリ断じる姿は聴いていても痛快でしたし、むしろ「何でやらないの?」という姿勢と変えて行きたいという本気度を垣間見た気がいたしました。

自分もスポーツだけでなく今あることをしっかりと取り組んでいきたい。

そのようなことを感じた回でした。とても素敵なお話と機会を作っていただき、ありがとうございました!