アスリートであれば一度は強く望むであろう大舞台、オリンピック。
並大抵の精神力では決して立つことさえままならないどころか、そこに至るまでには多くの難関も立ちはだかります。
そこで今回の超会議では、オリンピアンという大きな経験をされたアスリートがゲストとして現れます。
ロンドンオリンピックにマラソンで出場された藤原新さん
リオデジャネイロオリンピックにレスリング男子グレゴローマンで出場された井上智裕さん
長野オリンピックにアイスホッケーで出場された三浦孝之さん
どの競技におきましても華々しい活躍をされた方々にお話をお伺いしました!
最高峰に「オリンピック」があった
今回、ゲストとして迎えられた方々の競技はいわば「最高峰の舞台」としてオリンピックが存在しております。
例えば、野球であればMLBのワールドシリーズや甲子園、プロ野球というのがあり、サッカーであればJリーグにワールドカップ、UEFAチャンピオンズリーグ。バスケにはNBAにワールドカップという大舞台があります。
それと比較すると、マラソンでは世界陸上という舞台はありますが決して注目度は高いと言えません。
レスリングも吉田沙保里さんといった有名な選手はいらっしゃいますが、必ずしも競技単体が注目されたとは言い切れないですよね。
アイスホッケーもNHLは有名ですが、日本などでは決して有名とは言えません。
その中でやはりオリンピックという最終目標があった。
これはモチベーションとなりますよね。
だからこそ、そこには「苦しみ」もあったわけなんです。
アスリートとしてあった「苦しみ」
発想が柔軟だからこそ、悩み続けた藤原さん
藤原さんが現役だった時代は、実業団に所属しないで陸上選手をやるという発想自体が否定的な物でした。
「最強の市民ランナー」と呼ばれた川内優輝選手が台頭をしてきた時期であり、その中で「プロランナー」という異色の考え方、発想。これらがあったからこそ、思い悩む時期も非常に多かったのでしょう。指導方針が合わずに大学から逃げ出したこともあったと言います。
ただ、その中でずっと持っていたのは「理想からぶれなかったこと」。
日本マラソン界は低迷期の頃の話です。2時間4分台なんて夢のまた夢なんて言われていた時代でした。
そこに藤原さんが新風を吹き込む一つのきっかけになったと、個人的には感じております。
泣きながら練習し、大きな舞台と知った井上さん
一方で井上さんは、オリンピック代表候補となるまで以外にも「注目されずに伸び伸びとやっていた」と振り返ります。ただ、オリンピックともなると、周囲からのプレッシャーも大きくなるもの。
「大学生に追い込まれて泣きながら練習していましたね……」
と当時を振り返った井上さん。ただ、そこからそれだけオリンピックとはすごいものなのかと自覚し、乗り越えたと続けます。
「レスリングではミーティングはやらない」という井上さん。だからこそ、自らで感じて乗り越えることの大切さを知りました!
「人生で一番苦しい8試合」。崖っぷちからつかんだ三浦さん
三浦さんが出場したアイスホッケーは、決して日本では知名度も高くなく、強豪国とは言えません。最初で最後のオリンピックになるだろうなと感じていた三浦さんだったのですが、なんと代表の選考から一度外されてしまいます。
ただ、当時日系人選手を多く帰化させて強化を図っていた際、パスポート上の関係で選手に欠員が出たことから再度招集がかかります。
「1つのミスも許されない」と気迫たっぷりに臨んだ三浦さん。ただ、メンタルコーチから「今あなたは楽しめていないのでは?」と指摘されます。
ハッとした三浦さんはそこから吹っ切れ、非常に良いパフォーマンスを見せて長野オリンピックの日本代表に選出されました。なるちゃんもこれには強く同意。苦しくて辞めたくなった時に楽しむことを思い出したのだとか。
三者三様、様々な葛藤の中でやられてきたアスリートの苦しみを知り、そこから乗り越えてきたということがとても素晴らしいと私は思います!
では、そんな重圧をはねのけて、オリンピックという舞台へと辿り着いたアスリートの思考とはどういうものなのでしょうか?
オリンピックは大きくなり過ぎた!?
後半戦は、オリンピックに挑んだところから、オリンピックそのものへの指摘も相次ぎました。
「謝らない」藤原さんの極意とは?
藤原さんは仮に結果が出なくても、メディアの前では「謝らない」ことを信条としておりました。その真意は自分を卑下しないということ。失敗に対して「今日これを学んだ」という風に切り替えることができること。
あえてメディアの前で反感を買ったとしてもポジティブに前向きに考えられる人が大きな舞台で活躍ができると藤原さんは考えております。メディア対応一つで大きく変わってきてしまうのが世間です。
ただ、その中でも自分をしっかりと持ちぶれないからこそ、藤原さんは未知の世界からオリンピックという大きな舞台にたどり着くことが出来たのでしょう!
さらに「オリンピック」という価値に言及されると、北京オリンピックでは補欠だった経験と、ロンドンオリンピックでの経験も踏まえ「価値を相対化した方が良い」と話します。
オリンピックが全てなのではない、という価値観。
藤原さんが「プロランナー」というシビアな視点だからこそ、オリンピックでないと注目されないことへの警鐘でしたね!
負けるという恐怖を払い続ける井上さん
トップでいるとすごくしんどい。4年に1度という機会だからこそ、重みを語ってくれました。
井上さんはそういった意味で藤原さんの「スーパーポジティブ」に賛同しました。
リオデジャネイロオリンピックで吉田沙保里さんは「最強神話」が崩れて銀メダルとなったのですが、その際、吉田さんがこぼしていたのは「負けることへの恐怖」でした。国際大会で200を超える連勝記録を持ち、輝かしいまでの栄光を手にしてきた吉田さんだからこそ感じたのかもしれません。
ですが、井上さんも日本トップの選手となっていくにつれて格下の選手に負けることも経験し、次第に負けることへの恐怖に気が付きます。
常にポジティブでいるというのはなかなかに難しいもの。
しかし、それが分かっているからこそ、井上さんは藤原さんの考えに強く賛同したのでしょう!
また、レスリングという注目をされづらい競技をやっているからこそ、井上さんはオリンピックというものはとても重たいものになっていると指摘。
レスリングが日常的に陽の目を浴びることが少ないからこそ、そのように感じられたのでしょう!
求められていることを見抜き、重みを大切にする三浦さん
三浦さんは唯一、お二方と違い団体スポーツの出身。だからこそ、選手として求められていることをはき違えないようにしないといけないと語ります。
「トップの選手は失敗しても許されますが、ぎりぎりのラインに居る人は『自分に何ができるのか?』を分析して、監督・コーチの考え方を聞いて理解し、落とし込んでいくということをしていました」
団体競技として「自分がやりたいこと」と「求められていること」というのは得てして異なるもの。受け入れることもとても勇気がいることです。
なるちゃんも現役時代にそれを感じたようで、それを聞かれた時「だって浅田真央ちゃんには勝てないもん!」となり、アスリートもそう思っていたんだなと個人的に思わずうなってしまいました。
また、オリンピックの価値について触れられた際には藤原さんとは異なり「絶対的な価値もある」ということを言及。
日本においてアイスホッケーという競技がマイナーなものであるからこそ、こうしてスポットライトを浴びるチャンスでもありますし、心を一つにすることができるということも含めてオリンピックの価値を熱弁してくださいました。
オリンピックという世界的な大きなイベント・祭典を行う大チャンス。
ぜひとも個人的には開催をしてほしいですよね!
まとめ
三者三様の意見が出た、今回のスポーツ指導超会議。スポーツで培ったことを活かしていくのもまた、三者三様でした。
スポーツをビジネスに!藤原さんの想い
「スポーツをスポーツ以外で語ろうとするって、ぼくとしてはあまり好きではないんです」と語る藤原さん。それはビジネスとしてアスリートが成功して初めて言えること、という彼なりの信念がありました。
だからこそ、未来の後輩へと向けた言葉があります。
「稼いでほしいんです。ちゃんと競技で食えるってことを大事にしてほしい。ビジネスを語ることよりも、ちゃんとスポーツをビジネスにしてほしいなと思いますね」
一つの質問、問題に対しても真剣に考え、会話する藤原さんの言葉は、ストレートに刺さるものがありました。
折れずチャレンジする井上さんの原点がスポーツだった
会社員と働いている井上さんは、苦しい時期があった時にそこで辞めない・折れなかったのだと言います。それは振り返ってみるとスポーツの中で培ってきたチャレンジする気持ちは差があるのではないか、と井上さんは語ります。
元より好奇心旺盛な井上さんは、ポジティブに色々なことに挑戦あるいは協力をしてくださっています。
それがまた、多くの人に影響を与えているのは間違いありません!
三浦さんの「土壇場力」はスポーツから生まれた!
長野オリンピック後、31歳で現役を引退された三浦さん。その後は会社員として勤務しながらも、様々なことに旺盛に活動をされてきました。
そうした中で必ずしも順風満帆に来ていたわけではありませんが、それでも折れずに土壇場で力を発揮してきたり、諦めない気持ちを持っていたり。
そうした物がスポーツで培ってきた力ではないか?と振り返ってくださいました。
当然、うまく行くことばかりではなかったかもしれません。それでも折れずに積み上げてきたものの重みもまた、感じることが出来ました。
こうしてみると、三者三様ですよね。
アスリート一人とっても様々な考え解釈があるものなんです。また、競技ごとに関しても様々な解釈と考え方があるのもまた、興味深いと思いました。
藤原さん・井上さん・三浦さん。
今回はお忙しい中、本当にありがとうございました!