皆さんにとって「運動センス」とは何だと思いますか?
例えば同じ身体能力でも「センスがある」人と「無い」人が居ますよね。
しかも、中には運動のセンスが格段に高かったにも関わらず大成できなかった選手が居る一方で、無いと評された人でも後に世界チャンピオンになった・日本記録を樹立した……。
このような実例が山ほどあります。
実際、センスがある人のまねをしてそれで成功ができれば良いのですが、じゃあそれらを感覚だけでなくテクノロジーや教え方で形にできれば素晴らしいですよね。
そこで1月のスポーツ指導超会議では、その「感覚」や運動センスを物理に落とし込む。こうした観点から、スポーツを見ていきましょう。
そこで、感覚やセンスを事細かに突き詰めて作り上げた「バネトレ」。
こちらの考案者でもある、レベルアップスポーツ株式会社代表取締役の池上信三さんにご登壇いただきました!
運動センスとは何だ?
運動センスがあるというのは「世間的には」と前置きをしたうえで、
そうしたことを考えなくても「パッと」できてしまうことを指すと言います。
では、それができてしまう人とできない人の「差」は何なのでしょうか?
そこの答えに「バネ」があった!
「これはぼくにとっての命題で」という池上さん。
それも、池上さんの出発点は「自分ができなかったから」。
キャッチボールさえも顔面で受け止めてしまうほどの人だった池上さんはとにかく人一倍考えて考え抜いたことで、ある結論に達します。
それは「生まれつき」とは思えなかったことでした。「運動音痴は親を恨め」とはよく言われますが、そうではなく後天的なものがあると信じていた時、あることがきっかけでひらめきます。
それは、縄跳びのような跳躍運動をしているときのこと。
「筋肉の短縮・伸長・そのままの運動(アイソメトリック)。だけで構築されているのではなくて、アイソメトリックを柔らかくしたときに跳ねてくるバネで運動が行われているんだということに気が付いたんです」
バネ。これこそがまさしくバネトレの原点だったと言っても過言ではないでしょう。
そこから3年かけてすべての競技の「動き」の定義を確認・分解して再構築した池上さんは、一つ「運動のセンスがある人」のことをこのように表しました。
「自分のイメージと体の動きにずれが生じていないこと」。
これを運動センスがあると評したわけなんですね。その根底には体にバネがあることが根底にあるということ。そこを飛ばして思考すると、運動音痴や運動センスを見失う。
バネを作り出すのがバネトレだと思っていた私も、これは目からうろこでした。バネというものが根底にあることを見失わないこと。とても大切にしたいですね。
では、どうすればその「バネ」の意識を持って運動がうまくなるのでしょうか?
連動はさせる必要がない!?
参加者の中から出てきた意見の中にあった運動センスに関する定義の連動性。
ここから池上さんは、説明を始めてくださいました。
なんと、運動はそもそも「連動」をさせる必要がないというのです。
ウレタンで作られた緩衝材を取り出して折り曲げてみせたのです。
「こうやっても戻りますし、ねじっていても戻りますよね。あらかじめねじる・あらかじめしなるでしょ? これがバネなんですね」
ボールペンの中に入っているバネを思い出してください。グッと押さえつけてもビヨンと戻りますよね(それで何度ボールペンを壊したか分かりませんが……)。
これが野球となると、ボールを投げるときに一回後ろに勢いをつけてから投げます。つまり、身体を連続性のあるばねと定義し、反動をあらかじめつけることができれば、あとはバネの戻る動きを使って投げれば良いだけなのです。
ただ、人間とウレタン緩衝材の違うところは、人間にはいくつもの関節があるということ。これが却って故障の原因となることがあるわけなんです。自ら筋収縮もできるということは反動によって生まれたエネルギーに反する動きもできるわけですからね……。
たったこれだけで、なぜ故障するのかとバネを活かすこと。ここが分かったところで、「アスリートはどのような物理学を学ぶべきなのか」はさらに重要になりますよね。ただ、こちらについて池上さんは「何を学んでも良い」と語ります。
ただここからが極めて重要となります。それは「自分のスポーツに置き換えて考える」ということ。
例えば、現在アメリカで席巻している「フライボール革命」。これはどこから来たかというと、軍事関係の追尾レーダーを応用して作られたスタットキャストと呼ばれるデータ解析ツールによって生まれたと言われております。
こうした科学的な観点や本来全くスポーツと接点のないところから、また新たなる革命が生まれるかもしれませんね。
物理は絶対!根性論は不要!の訳は?
と言いましても、実際に指導になると、物理学上や机上の計算ではこのようになっていると事実を示すことが出来ます。ですが、どうすれば改善できるのかということはやはり指導者の言葉やコミュニケーションの取り方にゆだねられてしまいます。
つまり、最後に気持ちや根性といったものにどうしても依存をしてしまいそうになります。感覚的なものだからこそ、どうしてもそう言う部分に帰結をしてしまうものなんですね。
そこで、なんのために物理学や力学が存在しているのか。まずここからが大切になります。
数字は絶対ではありますが、なぜ絶対かというと「基準」になりうるから。
が、あくまでも「物理は絶対」ですが、それはあくまでもデータ上の問題であって選手個人にとって最適な物はそれぞれ個々人で最適解を見つけていくほかありません。
だからこそ、指導者の方々の様々な成長が求められるわけなんですね。
実際に池上さんが指摘をされているように、指導者の中には自らの経験則だけに則って指導を行う方が多くいるのが事実です。明確な根拠もないままで指導を行うことが、結果として選手たちの成長を阻害してきた面があるのです。
だからこそ、池上さんは指導に携わっている場所においてはそうした「根性論」を排して、スポーツインテグリティ(スポーツにおける誠実性・健全性・高潔性)を保つことに腐心しているとのこと。
既にスポーツでは軍隊のような「根性論」だけで成り立つものではなくなってきております。だからこそ、池上さんは「どういう手順でどういうことを教えればその子が伸びるのか?」というのを脳の構造と思考の回路と体の動きから考える必要があると述べておりました。
「次の時代はみんなで楽しく競技が向上できるように。というのを今取り組んでいる最中です!」
と池上さんが語るように、もしそれが実現できるのであれば、みんなで楽しくレベルアップができそうですよね!
まとめ
いかがだったでしょうか。
池上さんのバネトレ開発秘話・そして次の世代が楽しくそして高いレベルでスポーツを楽しむことができるようにという想い。
そして、指導者たちの更なるレベルアップがより求められていることを痛感した今回の超会議でした。
池上さん、今回はお忙しい中様々なお話をしていただきありがとうございました!