【10月超会議レポート】プロ意識を育む!早稲田大学レスリング部が強豪であり続ける理由とは

アスリートはお金がかかる。

これは何も今から始まった問題ではありませんよね。多くのスポンサーや実業団のサポートなどがあって初めて、選手は大きな舞台で輝くことが許されます。しかし、日本のアスリートを取り巻く環境というのは必ずしも実業団のサポート・あるいはスポンサーに恵まれているというわけではありません。

10月にお話していただきました、早稲田大学レスリング部監督の佐藤吏さん。なんと早稲田大学レスリング部としてスポンサー企業様が多く居るのだとか。その上で現在に至るまで、大学レスリング部でも屈指の強豪としても知られています。

今回は、自らスポンサー集めをしながら強豪チームとなった早稲田大学と佐藤さんに迫ります。

学生でもスポンサー集めができる秘訣とは?

先日、学生駅伝で隆盛を極める陸上長距離において衝撃的なニュースがありました。

八千代工業株式会社の陸上競技部の休部。実質的な廃部となるこの結果に、改めてアスリートを取り巻く環境が厳しくなっていることを突き付けられました。

いわゆる「メジャー」なスポーツでさえも、既にお金を投資する『価値』を見出すことが出来ないという事実がある中で、早稲田大学では「ワセダモデル」として30社以上の企業からの協賛を得ております。

早稲田大学の方針としてもOB会や大学に頼ることなく、自前でスポンサー契約を結ぶようになっている環境なども手伝い、スポンサー企業として多くの協賛を得ることが出来ているようなのです。

何やら活動そのものが「プロチーム」のような印象さえ覚えます。

しかも、これは早稲田大学の学生さんたちがスポンサー集めをしているのです。そのためか、入部してきた当初は面食らっていた部員も多かったそうです。

「でも今は、ゲーム感覚で楽しんでやっている学生が多いですね」と笑顔を交えて語る佐藤さん。アスリートにとって現役を続けるよりも現役引退後の生活のほうがはるかに長いもの。その「ゲーム感覚」の中にも社会との接点を持たせるという意味でとても大きな経験となりますよね。

また「やらない理由を無くす」ために、まずはコーチ陣たちのためにテンプレートを作成し、実績を作らせながら「やるしかない」という状況を作り出した結果、学生さんが週に一度の全体ミーティングだけでは追い付かないほど企業との打ち合わせをされているのだとか。

佐藤さんご自身も現役を退かれた後、起業されるまでの間に様々な経験を積んだ経験がございます。恐らく、アスリートの中でも起業をするという方は稀と思いますが、そうした経験やノウハウが存分に早稲田大学レスリング部に活かされているのでしょう。

そんな佐藤さんが語るスポンサー集めをする上で重要なポイントを語ると「やることから始まる」とシンプルな点から始まると語ります。やらないから集まらないと語る佐藤さんはそうしないと検証ができないからと語ります。

考え、行動させる

佐藤さんの講演を通して感じたのは「とにかく選手に考えさせる」という事。そして「行動をさせる」という事。

それは当然、選手たちがスポンサー集めをするという中では当然のことと思います。ですが、ただがむしゃらにやるのではなく営業に行く企業への分析、業態などを把握すること、またレスリングという競技において相手を分析することなどは決して無関係ではありません。

また、様々なことを考えて取り組ませた結果、今年の東京オリンピックでも活躍した選手たちを輩出するという結果にもつながったのでしょう。その上で選手たちに求めているのは「プロ意識」という言葉。

スポンサー契約を結んだ以上は、試合に出ることが出来ない、結果を出すことが出来ないのは企業側にとってもメリットがありません。だからこそ、選手たちはそれをモチベーションにして努力を重ねる。こうした循環が生まれているのはそうした中に「人間力」が高まり、アスリートとして更にレベルアップをしてくれるという事を信じているからでもあるわけですね。

また、佐藤さんもただ選手たちが自然とモチベーションが高まるのを待っているだけでなく経営者の方に講演していただくことなどアクションを取っております。

「スポーツの中でトップになる人と、業界でトップになる人。絶対共通点があると思うんです」

佐藤さんは自らの経験から熱っぽく学生時代のことを振り返ります。学生時代には新宿三越に入っていた書店にて4,5時間にわたってメンタルトレーニングから自己啓発関連の書籍を読み漁っていたのだとか。

そうした経験があるからこそ、学生さんたちに純度の高い形でモチベーションを引き出そうとしているのですね。

そして、そうしたモチベーションから生まれた想いを元にして、一人でやらずにみんなでやる。いいと思った事をやってみる。というさながらベンチャー企業のように様々な挑戦へと当てる。

早稲田大学のレスリング部はただ競技をやるだけではなく、まさしく大学生としてある「社会に出た時の学び」にもなるよう様々な行動をされているのが分かりますね。

そして、佐藤さんの講演を聞きながら今現在、サッカーにおいて発生している出来事にも共通すると考えました。

それは、スパイクメーカーがプロ選手よりもYouTuberに提供するようになっているのです。メーカーからすると「プロ選手に用具提供しても価値はない」と思わされているという事。

Jリーグは全都道府県にサッカークラブをというコンセプトを持ってはいます。それは素晴らしいことですし、競技の普及という観点からとっても画期的なことです。しかしながら、Jのトップクラブで活躍できる選手は一握り。しかも、海外や代表に選ばれなければ必ずしもクローズアップされるわけではありません。

実際に槙野智章選手はその言動と行動から誤解されがちですが、プロとしてサッカー選手として自らがどう見られるかを真剣に考え、行動に移していますし、こうして選手たちがどのように「価値」を高めていくのか。佐藤さんからはアスリートだけでなく、私たちにもそのように問いているように感じられました。

一つの部活動としてだけでなく、教育の場としても大変すばらしい。とても画期的な取り組みだなと改めて感じさせられました。

まとめ

いかがだったでしょうか。早稲田大学レスリング部には他大学に無い熱量と活気の秘密はとにかく行動をし続けるエネルギーが秘められていたのですね。

現在、大学という大きな研究機関は再び見直され始めております。先日読売ジャイアンツは順天堂大学との業務提携が発表されましたし、大相撲では現在の荒磯親方(横綱・稀勢の里)が筑波大学の相撲部の練習場を借り、また筑波大学との共同研究も行うとされております。

「大学」という資産と、だからこそ思い切って挑戦できる環境。そして早い段階から身に付けられたプロフェッショナルとしての精神。一つ未来のアスリートにとってのプロトタイプとなるのではないか。そんな予感さえ覚えました。

佐藤さん、この度は素敵な話をありがとうございました!