常に何かと力が入ったり、思わず何かから身を守るために防御反応を示したり。そうしたことの多い日常を過ごしている私たち。
ただ、時には思いっきりだら~っとしたい時もありますよね。
とは言っても、なかなかそういう時が無いのも私たちの日常です。
そんな中、やはりここは脱力のプロに話を聞くのがベスト。
前回に引き続き、脱力師の小林圭さんのインタビューを掲載。
アスリートにとっての“脱力”に迫ります。
そして、その恩恵とは一体なんでしょうか?
「脱力が筋肉同士を繋げてくれる」とは!?
これに対して小林さんは「体の連動性が高まりますね」と語ります。
例えば、同じ動きをするにしても力をグッと入れてしまえば、そこでストップしてしまいます。
だからこそ、全部を連動させて動かす方がはるかに効率も良いのです。
これは前々回もお話されていたように、人間の筋肉が500個すべて効率よく動く、これが何よりもベストだからこそ、小林さんは脱力につながると説きます。
「脱力が筋肉同士を繋げてくれる!」
この言葉通り、アスリートにとって力を入れることは大切ですが、それ以上に「抜く」。身体が連動して動くということが何よりも大切だということですね!
ここで脱力、としてぜひとも挙げたいアスリートが一名。
それが、ギレルモ・リゴンドウ選手。
現在、井上尚弥選手との対戦が取り沙汰されているリゴンドウ選手は、おおよそ5年前はとてつもなくしなやかでスピード豊かな選手でもありました(スポーツ指導超会議のメンバーでもある、和氣慎吾さんとも対戦が決まっていたという話もありましたね)。
一方で、一瞬で相手を打ち抜くカウンターも武器とした選手でもありました。
一見、引き締まった肉体にも見えますが、パンチの際には決して力むことなくどちらかと言いますと力の抜けた一撃で対戦相手をマットに沈めてきたのです。
腕だけの力でパンチは打てません。
下半身の力をしっかりと上半身に伝え、その過程でしっかりと腰を入れて打つことで鋭く体を回転させてパンチを打つことができるわけなんですね。
これもまた、効率よく体を使えている証でもあるわけなんです。
まさしく小林さんの言う「全身の筋肉500個をまんべんなく使うことができるアスリート」とも言えるでしょう!
と致しますと、高いパフォーマンスを発揮して全身の筋肉を連動させるためにはやはりアップとダウンが重要ということになりますね。
その違いはあるのか、こちらは次の項目でお話いたします。
アップとダウンはやることが一緒!?その訳とは?
小林さんによりますと、ここに違いは無いのだそうです。
もちろんこれから「締める」ために行うのと、「緩める」ために行う。
それぞれ目的は異なります。
しかし、意外と面白いもので筋肉は人間の目的意識の変化をしっかりと感じ取ることができる能力を持っているんです。
例えば、筋力トレーニングを行う際にも強化する箇所をしっかりと意識して取り組む。どんなイメージをもってトレーニングをするかによって、成果が大きく異なると言われているんですね。
だからこそ、小林さんは脱力を行う際にはきちんと説明をしているのだといいます。それは自分は締めたほうが良いと感じているアスリートも中にはいらっしゃるため。
だからこそ、きちんと説明をしたうえで脱力を勧めているのだそうです。
無理に行えばそれが「脱力」ではないということも分かっているからなんでしょうね。
何よりも無理にしてしまえば、それこそ怪我に繋がってしまいますからね……。
では、アスリートにとって「怪我」は付き物になります。
実際に小林さんも右膝の十字靭帯が無い状態になっています。
だからこそ小林さんは怪我に対してしづらい体を作るよう意識しているようです。
怪我をしたくないからこそ。
アスリートに限らず多くの方は怪我をしたくはありませんよね。
そのためにこそ、脱力という方法を取り入れてもらえると良いと、小林さんは語ります。
「硬いものがボン、と衝撃を受けたら壊れてしまいますけれど、柔らかいものは壊れない。その壊れない準備を身体がしていれば、怪我を最初に防ぐ。ならないようにやって行くという観点が良いところだなと思うんです」
大人になればなるほど、ちょっとした転倒で怪我をしやすくなる。
こんな話を良く聴きますよね。
それは、身体の中に「転んだらどうしよう」という恐怖感も持っているから。
子供のように柔らかく流れるように、吸収力をもって取り組むことができれば、怪我さえも怖くなくもっとパフォーマンスも高まっていくことは確実になってきますよね。
実際にフィギュアスケート選手の高橋大輔さんは2014年に現役を引退後、2018年に現役復帰をし全日本選手権で2位の好成績を収めました。
30代での現役復帰というのだけでも驚異的なのに、膝の痛みと戦いながらも見せた素晴らしいパフォーマンスには圧倒されました。
その中で、やはり体の中心はぶれずに芯がしっかりと通っているように感じられたのは、やはり彼が脱力と締めるというメリハリが効いていたからなのかもしれませんね!
だからこそ、このコロナ渦にある中で、練習場所が限られているアスリートには脱力を試してほしいと小林さんは語ります。
「それで合ったら合ったでラッキーだし、チャンスととらえてもらって緩めてもらえたらって思いますね」
必ずしも強制するわけでない小林さんのやさしさに包まれたインタビュー。
終始“脱力”していて、ただ聴いているとハッとさせられることばかりでした。
締めると抜く。この二つを知っているというだけでもまた、スポーツの奥の深さを感じることができるかもしれませんね!
次回は実際に脱力を体験してみることに!お楽しみに!
プロフィール
小林圭
20代前半に右膝前十字靭帯を損傷しつつも、アイドルグループの一員として活動する傍ら、様々なレッスンやトレーニングを行う。
自分の体と向き合う中で、心と体を整える為には脱力が重要であるということに気が付き、今まで培ったノウハウと脱力を掛け合わせ、独自の完全脱力メソッドを開発。
アイドルグループ卒業後、多くの方に完全脱力メソッドを伝えたいという想いでK-Studioをスタート。現在は唯一無二の脱力師として、美や動き、健康をサポートしている。