「センス」。
スポーツに限らずですが、世の中には様々なセンスに長けた人が多くいらっしゃいます。経営に政治的感覚。人間関係や日常の中でほんの小さなこと。間違いなく私たちには何かしらの「センス」を秘めていると言っても過言ではありません。
トップアスリートに限って言うならば、センスが卓越しているからと言って必ずしも成功したかというと、そういうわけでもありません。
8月にはこの「センス」をかつてトップレベルで活躍されていた方にお話しいただきました。千葉ロッテマリーンズにおいてリリーフ投手として活躍された荻野忠寛さんをゲストとして迎えました。桜美林高校から神奈川大学、日立製作所と強豪チームを渡り歩き、そして現役を退かれた後も野球に携わり続ける荻野さんが語る「センス」とは一体どのようなものなのでしょうか?
荻野さんが語る「センス」と、磨いた先にある「想い」とは。
まず荻野さんはセンスに関する能力を3つに定義しております。
・イメージを作る能力。
・そのイメージに寄せることができる能力。
・様々な知識を持っていること。
何よりも大切なのは「考える」という事。そしてセンスを磨くことが出来れば、どんなことにも成功することに繋がりますよね。
例えば、こうした文章を書き上げるときにも同じことが言えるんです。どうすれば分かりやすく伝わるかを主眼に置きながら完成形を想像し、そのイメージへと寄せていく(文章を作成する)。当然そこには知識という引き出しも重要ですし、また一つのパターン化ということも思考しながら書き上げる形を取ります。
とてもシンプルに語るならば、センスを磨くというのは「思考する」という事に繋がるのかもしれませんね!
では、なぜ荻野さんは「センスを磨く」ということを今行っているのでしょうか。それは、千葉ロッテ退団後、日立製作所に復帰された時のこと。
実際にプロ野球選手も多く輩出している日立製作所野球部はやはり高校・大学で活躍してきた素質の高い選手たちが多く在籍をしており、2016年には都市対抗準優勝も成し遂げたほどの強豪チームです。
しかしながらそんな日立製作所を始めとした、社会人からプロ野球へと入団できる選手というのは決して多くはありません。荻野さんもプロの選手が行っているようなトレーニングを実際に教え、そして指導をしていたのですが、それでも中々上手く行かなかったというのが原点にあったとのこと。
そこから「センスを変えないと」という気づきを得て、現在荻野さんが自ら考案された「スポーツセンシング」という「センス」を磨くということにフォーカスを当て現在多くの方の指導に携わっているのですね。
実際に社会人選手でプロの人たちが見るのは「1年目から活躍できるかどうか」。荻野さんもプロ1年目から活躍されたように、アマチュアでのカテゴリーが上がれば上がるほど、求められるものが大きくなるのが現状です。
実際に源田壮亮選手やオリンピックで抑え投手を務めた栗林良吏選手、メガネの捕手として大活躍された古田敦也さんに「オレ流」こと落合博満さん。
社会人出身の選手で素晴らしい成績を残されている方は1年目から活躍をしており、荻野さんも例外にありません。また、プロ野球という突き抜けて素晴らしい能力を持っていた選手たちと触れ、様々な会話から得た経験と社会人での経験。そこからセンスという重要なキーワードを見出すことが出来たわけなんですね!
磨くべきセンス。荻野さんが思う今後スポーツのあるべき姿とは?
そんなアスリートの競技力向上などを含め、センスという部分から選手を支える荻野さんは、スポーツ業界の問題についても言及してくださいました。
スポーツという文化自体が根付いていない事。本来スポーツはエンターテイメントで、多くの人が楽しむことができる物でもあります。また、健康面からも極めて大きな効果があることは言うまでもないことですよね。だからこそ、現在のスポーツ業界に蔓延る様々な問題に荻野さんは警鐘を鳴らしておりました。
例えば、エンターテインメントとしてのスポーツ業界のビジネスの考え方、練習時間が長いという問題、指導者たちが取り巻いている問題点。遥かに先んじるヨーロッパと比較をした際に大きな課題があることは間違いありません。
実際に荻野さんやなるちゃんからも出た野球の「プロアマ規定」など、いびつなルールが存在していたことによって競技力向上が妨げられてきた部分があります。日本人選手が即座にメジャーへと行けないのもそうした環境があるからなのです。もちろん言及されていた物のいくつかは改善されつつありますが、興行という面においてはまだまだ変わらなければならない部分もまだまだ多くございます。
荻野さんがプロ野球という大きな舞台を経験されて見えてきたものがあるからこそ、まだまだ変わらなければならない。それらを如実に感じました。
それは実際に、スポーツチームが出来たことによって行政にまで良い影響を齎し、街が活気づいたという事例が日本にもあるからこそなのです。それこそが、茨城県鹿嶋市。鹿島アントラーズの本拠地と言えば良いでしょうか。
当時は住友金属鹿島という、実業団でも2部に在籍するチームだった鹿島アントラーズ。当時、漁業と鹿島臨海工業地帯などはあるものの、決して活気のある街であるとは言い難い部分がありました。
しかし、1993年にJリーグが発足されることになったこと、そこに「オリジナル10」というJリーグチーム選ばれたこと。ワールドカップでも大活躍したレジェンドであるジーコが入団したこと。そして、優勝候補と呼ばれたヴェルディ川崎にあと一歩のところまで追い詰めたこと。
これらすべてが相まって、地域が活性化し鹿嶋市にある鹿島学園高校(通信制学校もある比較的大きな学校ですよね)はサッカーの強豪になり、野球部も2021年の夏の甲子園に初出場を達成するなど、教育機関とも良い連携を取り改善した結果と言えるでしょう。しかも、今回のコロナウイルスによって、大きな医療機関が出来上がったことで鹿嶋市の医療にも良い影響を及ぼしたという思わぬ効果もありました。
もちろんこれらは自治体からの援助やそれを受け入れられる土壌があったからではありますが、こうしたスポーツチームだけでなく全員で一つになって取り組むこと。
それらがとても良い影響を齎すと言えるのでしょうね。
まとめ
荻野さんはスポーツに関してより良いものにしていきたい、という想いが落ち着いた口調の中からそうした情熱も感じることが出来ました。
「センスを磨く」というアプローチから、今後スポーツに限らずに自分自身が得意とする形で様々な成功をされていく方が増えてくれると良いな。そんなことを思います。
それももしかしますと、荻野さんがボビー・バレンタインというメジャーリーグでも実績を残された監督の下でプレーされていたからなのかもしれません。そこから得た経験、想い。よりこれからもぜひとも還元していただけると嬉しいですよね!
荻野さん、この度はお忙しい中様々な気づきと学びになる機会をありがとうございました!