【6月超会議レポート】食事からパフォーマンスアップ!自分と向き合いレベルアップするには?

梅雨も明けて、いよいよ夏本番。皆様は夏バテになったり、食が細くなったりしていないでしょうか。

例えば、大相撲の力士にとって「食」というものも稽古(トレーニング)の一つとして捉える風潮がありますし、実際にダルビッシュ有投手は自らが口にするものにも強いこだわりを持っています。

また、健康を保つ上でも「食」というのは極めて重要な部分を占めておりますよね。

何分自分自身も向き合ってきていなかったからこそ、今回も深い学びとなりそうです。

今回はそんなアスリートの食を支える栄養士の方をゲストに迎えて、お話をしていただきました。

Athlete Meal 360°ディレクター、株式会社OTOMO 代表取締役である管理栄養士の橋本恵さんにご登壇いただきました!

日本人の食事の「ベース」とは?

橋本さんはサッカー・ラグビー・女子の長距離陸上を始めとした選手たちのサポートから始まり、オリンピック日本選手団に日本食の提供を行うなど、まさしく最前線に立ち活躍をされてきた方の一人。

時には選手の海外遠征に同行し、食事を作ることもありました。
冒頭で見せていただいた写真にはとても楽しそうに写る選手と橋本さんがいらっしゃり、その状況が窺えます。

しかしながら「失敗も多かったですね」と橋本さんは振り返ります。

大会前にある選手から「トンカツが食べたい」と要望があった際に、小麦粉とベーキングパウダーを間違えて買ってしまったのだとか(英語圏で無いところだったそうなので、何を買えば良いか分からなかったそうです)。結果、選手から「……苦い」と言われてしまったものの、選手はメダルを持って帰ってきてくれたというエピソードがありました。

橋本さんは今回、何とスペインから参加してくださっているように、現在もアスリートに請われて英語圏でない国にも飛んで行くのだとか。こうした失敗を活かしながら、このような事が起きないように研修をしないかと呼びかけたり、困るのを前提として行っているので、どうにか人に助けて貰うようにしているとのこと。

特にヨーロッパと言えど、大都市でない限り英語が通じる土地というのはほとんどありません。しかも、合宿所の場所はむしろ交通などは不便なところがほとんどです。業務外で困ることが多くあるということが分かっているからこそなのでしょう!

また、日本人アスリートの見地に立って、ベースとなっているのは「日本食」であると橋本さんは考えます。なるちゃんも現役時代は一週間トータルで考えながら、食事のバランスを考えていたそうですが、橋本さんはそこから「日本人は“あるもの”を使ってバランスを取っているんです」と語ります。

では、それは何なのでしょうか。

古来からある考えをベースに食事を楽しむ!

日本人の基本は「一汁三菜」。これは室町時代に日本の食事のベースとなっているとのこと。アスリートの栄養のベースとなっているのはこれなのだとか。それから、橋本さんはさらに投げかけます。

「このベースとなっているのは何でしょう?」と。確かに、日常の中でそこまで意識して食事を取っているなんてことは無いですよね。

それが「ご飯・お汁・おかずが三つ」。これが食事の基本となっているわけなんですね。

そして、調理方法も「五味五法」がベースとなっております。

五味とは「甘味・塩味・酸味・苦味・旨味」という味の種類、五法は「生・蒸す・焼く・煮る・揚げる」という調理法。

こうしたものを組み合わせながら、私たちは食事を楽しんでいるわけですね。

ですが、イチローさんのようにとてつもない偏食家の選手もいれば、世界バンタム級を10度も防衛した長谷川穂積さんのように濃い味付けが好きな選手もいらっしゃいます。つまり、画一的なものはないというのが答えでもあるわけです。個々人にとってのベースを知ることはとても大事ですよね。では、それはどうすれば知ることができるのか?

その質問に橋本さんはこのように答えてくださいました。

自らの身体の「センサー」を高める

「選手たちには4種類の“計”を持ってくださいとお願いしています。体重計・計量カップ(スプーン)・体温計・温湿度計。これらで色んなものを計ることで、自分というものが見えてきます。その上で食事をレコーディングする訳なんです。話を聴き、データを取ってもらうことを大切にしています」とのこと。

これには選手がどうしてそういう食事を取っているのかという意図を知るため。そのためにはまず自分を知らなければならないということなんですね。

例えば、ウサイン・ボルトさんは北京オリンピックではマクドナルドのチキンナゲットばかりを食べていたことで有名でしたし、内村航平選手はブラックサンダーばかり食べていたなんていうとてつもないエピソードがありました。

ご自身の中にある「センサー」を感じ取ること。どういう意図なのか、何を欲しているのかを知ること。これはどんなアスリートにも通じることなのかもしれません。

アスリートにとって「食事」とは?

アスリートにとってもとても食事は大事なことですが、橋本さんはさらに「あなたにとって」という部分に主眼を置いているようです。それは例えば、サッカーという競技でもポジションによっては運動量も消費カロリーも全く異なりますし、長友選手と本田圭佑選手では当然走行距離も異なりますよね。

だからこそ、選手個々の特性が極めて重要になってきているわけなんですね。

しばしばダルビッシュ投手は自らのトレーニングに関する考え方を公開はしますが、決してそれを強制はしません。それはその人にあったトレーニングが大事だからと考えているからなんです。

また、現在ネットなどで出回っているトレーニングや栄養素に関する論文は、必ずしも鵜呑みにしてはいけないと警鐘を鳴らします。

「昨年、UEFAが育成年代に向けた共同声明を出したのですが、それを見てみると炭水化物の量が圧倒的に足りないんですよ。私たちは情報を“正しく”キャッチしないといけないし、自分をモニタリングすることはとても大切なんです」と語ります。

ただ、食事を機械的に取ることが良いというわけではありません。やはり作法であったり、食べ方はとても大事であると力説します。

実際にイチローさんは「日本人だから」という理由で、箸の持ち方をとてもしっかりと意識しているのだそうです。エレガントに食べる姿は、やはり他の方からも良い印象を与えるし、またその姿勢が選手たちに「お金を落とす」という流れに繋がってくるのでは?と橋本さんは語ります。実際に美味しい食事から稼ぎたいという意識に繋がるからこそなのでしょうね。

また、これは個人的な意見ですが食事を楽しく摂る事もとても大切だと思います。

例えば、駒澤大学の駅伝部ではあの厳しいことで有名な大八木監督も一緒に食事を摂るそうです。それは厳しく練習をする一方で、食事中は楽しい話に花を咲かせ、チームとしても一体感を生み出すことが目的なのだとか。

これによって、より競技にも打ち込むことができるようになるという配慮もあるわけなのです。実際に、平成初の箱根駅伝4連覇を達成したことからもそれは明らか。また、現在でも他の大学ではすぐにエースとなることができるレベルの選手が揃っております。食事一つとっても、その強さが覗えますよね。

また、サッカーの日本代表では、専属シェフである西芳照さんが選手たちのためにライブクッキングを行い大好評。それまで残されることが多かった食事も完食してくれるようになり、ワールドカップなどで大会終了後には「西さんありがとう」という寄せ書きまで送られたほどだとか。

ただ食事を摂るだけでなく、見られているという意識やチームで楽しく食べるという意識がもたらす影響は、遥かに齎すものが大きい。決して外すことが出来ないからこそ、偉大さを知りました。

まとめ

とても明るく、そして分かりやすくお話をしてくださった橋本さん。どこを抜き出せば良いのか分からなくなるほど、内容の濃くそして興味深い講演に、つい私も引き込まれてしまいました。

たかが食事、されど食事。改めて食事からパフォーマンスを見直すということを、ぜひともしてみると良いのかもしれませんね!

橋本さん、お忙しい中(しかもスペインから!)講演いただき、ありがとうございました!

(文:金子周平)